2020/02/03
独自調査
リスク対策.comは、感染拡大を続ける新型肺炎への企業など組織の対応状況を明らかにするため、1月27日から31日にかけて緊急アンケート調査を実施した。その結果、従業員に対するマスク着用や手洗い、手指消毒など感染予防の呼びかけは多くの組織で行われているものの、徹底までできている会社は3割弱、さらに、社内に感染者が発生、あるいは感染が拡大した際の対応計画の策定については、実施・徹底している組織は一部にとどまることが明らかになった。新型肺炎は、健康被害だけでなく、今後、企業の業績、さらには世界経済にも大きな影響を及ぼすことが懸念されている。感染防止策と併せてBCPの見直しが求められそうだ。
アンケートの対象は、リスク対策.comのメールマガジン購読者で、組織の総務またはBCPに携わる人とし計363の回答を得た。このうち、個人事業者や、同一組織からの重複回答、組織名が未記入の回答などを除き、355を有効回答として分析した。なお、本アンケートは、兵庫県立大学の木村玲欧教授に監修を依頼した。
回答者の所属組織(以下、回答組織)の規模は500人以上が約半数を占め、業種別では製造業が最も多かった。回答組織のBCPの策定状況は「BCPを策定しておらず、策定する予定もない」とした組織が4%で、大半がすでにBCPを策定しているとした。
これまでの感染症対策(新型肺炎に限らず)
アンケートではまず、新型肺炎に限らず、インフルエンザや麻疹(はしか)など、従来からの感染症への対策についての取り組みを、項目ごとに4段階の実行レベル(1:特に何も考えていない、2:実施をしようと思っているが現時点では何もやっていない、3:実施しているが徹底できていない、4:徹底して実施している)で評価してもらった。これらの項目は、中小企業庁(2009)「新型インフルエンザA(H1N1)対策のための事業継続計画」、東京商工会議所(2009)「中小企業のための新型インフルエンザ対策ガイドライン~命を守り、倒産をまぬがれるために~」、厚生労働省(2009)「事業者・職場における新型インフルエンザ対策ガイドライン」などを参考に、新型肺炎でも同様に求められそうな項目をまとめた。
【質問】従業員への対策
1.従業員や家族への正しい予防策の教育
2.マスク着用・咳エチケットの呼びかけ
3.手洗い、手指消毒、うがいの励行
4.感染した可能性がある場合の医療機関への事前連絡
5.感染した場合の職場への連絡の徹底
6.感染拡大時における出勤前の体温測定
グラフ1が示す通り、「感染拡大時における出勤前の体温測定」を除き、全体に取り組みが進んでいる傾向が明らかになった。ただし、グラフ2の回答詳細を見ると、「従業員や家族への正しい予防策の教育」「マスク着用・咳エチケットの呼びかけ」「手洗い、手指消毒、うがいの励行」については、「実施しているが徹底できていない」との回答が高く、課題もあることをうかがわせる結果となった。
「感染した可能性がある場合の事前の医療機関への連絡および速やかな受診の呼びかけ」については、感染拡大防止のため、通常のインフルエンザなどでも推奨されている。一方、新型肺炎について、厚生労働省では「湖北省に滞在していて、帰国後2週間の間に発熱や呼吸器症状がある場合には、マスクを着用するなどの咳エチケットを実施の上、あらかじめ保健所に連絡の上、速やかに医療機関を受診すること」と、医療機関に行く前に保険所に連絡をすることを呼び掛けている。なお、受診に当たっては、湖北省への滞在歴があることを申告する必要がある。
「感染拡大時における出勤前の体温測定」については、徹底しているとの企業は14%にとどまる。今後、新型肺炎の感染拡大を考えれば、検討はしておいた方がいい。ただし、強制までは難しいため、就業規則なども併せて見直しておくことも大切だ。
独自調査の他の記事
おすすめ記事
-
医療機能の維持を可能にした徹底的なハード対策非常時の代替ライフラインはチェック表で管理
元日の能登半島地震で激震に襲われた恵寿総合病院では、地震後も業務を止めることなく、充実した医療を提供し続けた。10年をかけて整備してきた、徹底的なハードとソフト対策のおかげだった。
2024/05/20
-
目まぐるしい状況変化 懸命に向き合った3カ月
市立輪島病院は能登半島地震で被災しながらも、懸命の処置により、運び込まれる負傷者や感染症に苦しむ患者の命をつなぎました。超急性期・急性期を乗り切ると医療需要は急減し、代わって介護機能の維持が深刻な課題に浮上。発災から介護医療院開設までの約4カ月、病院で何が起きたのかを同院事務部長の河﨑国幸氏に聞きました。
2024/05/20
-
-
リスク対策.com編集長が斬る!【2024年5月14日配信アーカイブ】
【5月14日配信で取り上げた話題】今週の注目ニュースざっとタイトル振り返り/特集:行動指針の意義
2024/05/14
-
-
情報セキュリティーは個人のリスク目線では通用しない
学生時代からパソコンを使いこなしてきた人が新入社員に多くいる昨今ですが、当然、個人と会社ではセキュリティーの重心が違います。また、人事異動で新たに着任した社員も、業務が変われば情報資産との関わり方が変わり、以前と同じ意識でのぞめばよいとは限りません。新年度にあたり、情報セキュリティーのルールは特に徹底したいところです。
2024/05/10
-
-
サイバーインシデント対応の基本知識と準備
本勉強会では、一般的な情報セキュリティインシデントとサイバーインシデントの違いや、その初動対応について事前に準備すべきことと合わせて、自社で手軽に訓練・演習を実施するためのポイントを解説します。2024年5月8日開催。
2024/05/09
-
-
炎上の原因はSNS上の振る舞いのみにあらず
新年度から仲間に加わった新入社員は「デジタルネイティブ」と呼ばれ、友人とSNS で交流するのがあたり前の世代です。が、学生時代と違い、社会人になれば取り巻く環境が変わり、自身の立場も変わる。うかつな投稿が「炎上」につながるケースは少なくありません。新人研修のテーマにSNSリスクを組み込むなどして教育を徹底したいところです。
2024/05/08
※スパム投稿防止のためコメントは編集部の承認制となっておりますが、いただいたコメントは原則、すべて掲載いたします。
※個人情報は入力しないようご注意ください。
» パスワードをお忘れの方